CASE STUDY

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インバウンドは「販売の場」から「育成の場」へ。花王が実践する、未来のブランドを育てる新戦略

野原 聡様(花王株式会社 ヘルス&ビューティー事業部門 ヘアケア第1事業部 ブランドマネージャー/DX推進リーダー)

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取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
OVERVIEW

多くの企業がインバウンド市場を「販売の場」と捉える中、全く異なる視点で新たな価値を創造しているのが、花王株式会社様です。同社はインバウンドを、新商品をテストし、世界へ羽ばたくブランドへと育てるための「インキュベーションセンター(=孵化装置)」と位置付けています。本記事では、そのユニークな戦略の背景と、私たちNOVARCAとの取り組みをご紹介します。

課題

  • 日本と海外の消費者では、同じカテゴリでも商品に求めるニーズが大きく異なる
  • 日本でのヒット商品をそのまま海外で展開しても、必ずしも成功するとは限らない
  • 新規ブランドやニッチな商品を、大きなリスクを取らずに海外市場へ導入・育成したい

施策

  • インバウンド市場を、新商品をテスト・育成する「インキュベーションセンター」と定義
  • SNS分析等で現地の潜在ニーズを深く洞察し、戦略商品(ines)を選定
  • KOS(Key Opnion Seller)を巻き込んだ体験会やライブコマースで、初期の口コミと販売実績を創出

成果

  • 日本ではニッチなカテゴリの商品について、インバウンド需要の創出に成功
  • 大規模な広告投資をせず、低コストで海外向けのテストマーケティングとプロモーションを実現
  • 将来の本格的なグローバル展開に繋がる「勝ち筋」を発見

花王様は、インバウンド市場を「プロダクトライフサイクルの導入期」として機能させています。その背景にあるのは、「日本と海外の消費者ニーズは根本的に違う」という深い洞察です。

例えばヘアケア製品。日本では「髪を美しくする」「ダメージをケアする」といったニーズが主流ですが、中国のトップニーズは「育毛」や「スカルプケア」。たとえ日本で大ヒットしている商品でも、現地のニーズとズレていれば受け入れられません。

だからこそ、「どう売るか」の前に「何を売るか」を的確に捉えることが最も重要になります。インバウンドは、海外のリアルな顧客反応をダイレクトに得られる、絶好のテストマーケティングの場なのです。

データで勝ち筋を見出す – 「何を売るか」の技術

インキュベーション戦略を成功させる鍵は、徹底した事前調査とデータ分析にあります。その象徴的な事例が、スカルプケアブランド「ines(イネス)」です。

あえて、日本では流通を限定しているこの商品を、インバウンドの戦略商品として選定。その理由は、「中国でまだ販売されていない」「日本でしか買えない」という希少性に加え、事前調査で発見したある「勝ち筋」にありました。

「ines」はスクラブタイプのシャンプーという、中国ではまだ珍しいカテゴリの商品です。しかし、NOVARCAが行ったSNS分析や調査から、この「スクラブ」という要素がスカルプケアを求める現地の潜在ニーズに刺さり、高い評価を得られる可能性が浮かび上がりました。日本での常識に捉われず、データに基づいて海外でのポテンシャルを見出したのです。

小さく始め、大きく育てる – KOS(Key Opinion Seller)を活用したプロモーション

有望な商品が見つかっても、「いきなりマーケティング予算を潤沢に投下できるわけではない」のが現実です。そこで花王様が取ったのが、KOSを戦略的に活用する、費用対効果の高いプロモーションでした。

私たちNOVARCAは、影響力のあるKOSを日本のサロンに招き、「ines」のシャンプーを実際に体験してもらうイベントを企画。その場で商品の魅力や正しい使い方を深く理解してもらい、ライブ配信などを通じて彼らのコミュニティへ情報を拡散してもらいました。

この手法は、単に商品を売るだけでなく、熱量の高い口コミを創出し、PR効果を最大化させます。KOSを「口コミの起点」と捉え、小さな投資から大きなうねりを生み出す。これは、インバウンドをインキュベーションセンターとして活用する上で、非常に有効な戦術です。

まとめ

花王様の事例は、インバウンドマーケティングの新たな可能性を示しています。

  • 発想の転換: 市場を「販売の場」から「育成の場(インキュベーションセンター)」へ。
  • データドリブン: 日本の常識に囚われず、データで海外の潜在ニーズを掘り起こす。
  • 戦略的活用: KOSを口コミの起点とし、低コストで需要を創出する。

私たちNOVARCAは、クライアント様のユニークな戦略を深く理解し、市場調査から具体的なプロモーション施策の実行、さらにはKOSの価格マネジメントまで、一気通貫でご支援します。

まだ世に出ていない商品の可能性を海外市場で試したい、あるいは新しい切り口でインバウンド戦略を構築したいとお考えの企業様は、ぜひ一度NOVARCAにご相談ください。

野原 聡様
花王株式会社 ヘルス&ビューティー事業部門 ヘアケア第1事業部 ブランドマネージャー/DX推進リーダー
2006年花王入社。「アタック」のマーケティング、営業を担当したあと、花王中国(上海)で3年間、デジタル・ECを中心としたマーケティングを経験し、現在、ブランドマネジャーとして国内インバスヘアケアカテゴリー(melt, Essential,メリット,セグレタなど)のマーケティングに従事。
取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
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