「人が人にサービスを提供する」サロンを核とするブランドにとって、「体験の輸出」は本質的に困難であり、急激な事業拡大は本質的価値の毀損にもつながりかねません。
本記事では、2026年4月9日に開催されたNOVARCA主催セミナーにて、株式会社uka 取締役副社長COOの小笹和洋氏が語った、1946年創業・80年の歴史を持つサロン発ブランドの独自戦略を紹介します。マーケティング予算の制約を抱えながらも、サロン体験を核に世界へ挑む、小規模ブランドだからこそ実現できるオールバウンド戦略の理想形に迫ります。
課題
- 体験価値の希薄化リスク:高品質な対面サービスを核とするブランドにとって、急激な事業拡大は本質的価値の毀損につながる懸念があった
- 海外展開の難しさ:「体験の輸出」が本質的に困難なブランド特性を抱えていた
- マーケティング予算の制約:大手と同じ手法では戦えない事業規模だった
施策
- サロンを全戦略のコアとする方針:店舗数を絞り、品質を維持した
- 直営店・直営ECの「メディア」化:販売の場ではなく「体験を伝えるメディア」として機能させた
- 日本固有の植物原料を独自性の核に:クロモジ、ヘナ、月桃などをサロンメソッドと結びつけて商品設計に組み込んだ
- インバウンドの戦略的再定義:「体験輸出の難しさ」を超える戦略的接点として、インバウンドをソーシャルコマースで再定義した
成果
- インバウンド比率が2%→10%以上に急成長:直営店のインバウンド客比率が急伸し、宮下パーク店では15%、京都店では20%に達した
- 予算ほぼゼロでのロイヤルカスタマー基盤構築:マーケティング予算をほぼかけずに、ロイヤルカスタマー基盤の着実な積み上げを実現した
- 中華圏マスターディストリビューター契約の締結:約4年の協業で中華圏のトランザクションが右肩上がりに成長し、中華圏全体のマスターディストリビューター契約締結にいたった
80年の歴史と「サロンが原点」というブランド哲学

ukaの原点は、80年前に創業した一軒の理髪店にあります。
1946年、戦後の小屋からスタートした事業を、創業家である向原ファミリーが3世代にわたり育ててきました。2009年には屋号を「uka」へとリブランディング。現在は、創業家の渡邉季穂会長と、元・博報堂で約20年のマーケティングキャリアを持つ渡邉社長の体制で、ファミリー経営を貫いています。
小笹氏は、ukaが「人が人にサービスを提供する」サロンという場所を、すべての活動の起点に置いていることを強調しました。
「私たちは長く続く美しさを大切にしています。だからこそ、無理な拡大を追わず、現場の技術者が心から納得したものだけをお客様に届けるというスタンスを貫いています」
このブランド哲学は、社内でも徹底されているといいます。濱野が紹介したエピソードとして、先日のukaのイベントで、渡邉社長がNOVARCAのプラットフォームのセラー(販売員)に向けて「無理に売らないでください。共感してくれる人だけに届けてください」と語っていたといいます。短期的な数字よりも思想への共感を優先する姿勢が、結果としてお客様との揺るぎない信頼関係を築く礎となっています。

直営店・直営ECに広げる「サロン体験」

ukaは現在、東京を中心に5店舗のサロンを運営しています。一時は店舗数を拡大した時期もありましたが、サロン体験のクオリティを守るため、2020年に5店舗・約120名(社員の約半数がサロン勤務)という体制に絞り込みました。
この体験を広げる装置として、6年前から展開を始めたのが直営店ストアと直営ECです。直営店では、サロンの技術を学んだメンバーがブランドの世界観を直接届けます。一方、直営ECは単なる販売の場ではなく、「メソッドを伝えるメディア」として位置づけられているといいます。
「私たちは物を売る場所ではなく、ukaの考え方を伝えるためにECを運営しています」
サロンのメンバーが商品開発に直接関わり、スタイリスト・スパリスト・ネイリストといった専門家の納得感を伴うプロダクトしか世に出さないという、徹底した「現場発」の哲学がそこにあります。
このサロン体験の延長線上には、三越伊勢丹をはじめとする百貨店との取り組みも広がっています。濱野は、「三越伊勢丹さんが越境EC事業を始める際にも『キラりと光る日本のブランドを世界に広げたい』という方針が示されており、ukaはまさにその象徴的なブランドの一つだった」と、業界横断的な評価について補足しました。
日本独自の原料が紡ぐ、揺るぎないブランド独自性

ukaの独自性を支えるもう一つの柱が、日本固有の植物原料への徹底したこだわりです。
代表的な存在が、頭皮や肌を整える効果を持つ日本固有の植物「クロモジ」。2024年には、クロモジを贅沢に使ったシャンプー・コンディショナーをリニューアル発売しました。さらに月桃、米発酵液、石垣島産のヘナといった日本独自の原料を、サロンメソッドの一部として商品設計に組み込んでいます。
「日本独自の原料は、他国では真似ができない」
日本のビューティ産業の国家成長戦略づくりに関わる濱野も、この観点に強く共感を示しました。研究開発力やテクスチャーの良さに加え、日本固有の原料という独自性が、グローバル市場でukaを差別化する強力な武器となっています。日本ならではの原料に深く向き合い、それをサロンメソッドと結びつけて商品化する。この一連のプロセスが、安易に真似されにくい強固なブランド資産を形作っています。
インバウンドの急成長が示す、ukaのオールバウンド戦略

これまでukaは、NOVARCAと共にソーシャルコマースによる海外販路を開発し、順調に事業を伸ばしてきました。その戦略は、欧米での展開や海外現地でのポップアップなど、基本的に「アウトバウンド(輸出)」中心に展開してきました。
しかしながら、人が人に提供するサロンの本質ゆえに「体験の輸出」は簡単ではありません。そこで小笹氏が語ったのが、オールバウンドを起点とする戦略への転換です。
直営店のインバウンド客比率は、これまで約2%程度でしたが、現在は10%以上に急成長。宮下パーク店では15%、京都店では20%にも達しています。「日本に来たらukaに行ってみよう」という認知が広がり、サロンで初めて深い体験をした方が、帰国後にECやコミュニティを通じてブランドと繋がり続けます。
アウトバウンド向けのセラーには、サロン体験やブランド・商品の深い理解を促進するワークショップで、ブランド理解と熱量を高めます。サロンで生まれる信頼と評判を起点に、インバウンドとアウトバウンドの導線をつなげる。小規模ブランドだからこそ実現できるオールバウンド戦略の理想形が、ukaの取り組みから見えてきました。
実際、NOVARCAとの約4年の協業のなかで、ukaの中華圏でのトランザクションは右肩上がりに成長し、今年からは中華圏全体のマスターディストリビューター契約を結ぶに至っています。濱野は、ukaの戦略について「限られたリソースの中で着実にロイヤルカスタマーを積み上げ、長期にわたって伸びていく姿勢は、100年続く老舗ブランドの戦い方に近い」とコメントしました。
大手ブランドのオールバウンド戦略とは異なる、独自のアプローチで世界に挑むukaの歩みは、これからの日本ブランドが学ぶべき重要なモデルケースです。
「自社の強みを起点とした世界戦略を描きたい」「限られたリソースで海外展開を進めたい」。そんなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度NOVARCAにご相談ください。
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