免税(トラベルリテール)は「旅先での一度きりの購買」という一過性の接点になりやすく、帰国後の関係構築が業界共通の課題とされてきました。
本記事では、2026年4月9日に開催されたNOVARCA主催セミナーにて、コーセートラベルリテール株式会社 代表取締役社長の木瀧寛人氏が語った、免税とアメニティ事業という旅の二つの顧客接点を融合させた立体的マーケティング戦略を紹介します。「旅マエ・旅ナカ・旅アト」を一本の線でつなぐ、コーセートラベルリテール(以下KTR)のオールバウンド戦略に迫ります。
課題
- 顧客接点の一過性:免税チャネルは「旅先での購買」という一度きりの接点になりやすく、帰国後のリーチが困難だった
- 部門間のサイロ化:国内ローカルチーム・海外ローカルチーム・免税チームが個別KPIを追うことで、お客様の体験が分断されていた
- IDの取得難易度:免税では顧客IDの取得が業界共通の課題となっていた
施策
- 「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の一気通貫設計:ホテルアメニティでの「体験」を起点に、免税店での「購買」、SNSでの「対話」までを一本の線で接続した
- LINE公式アカウントによるID基盤の構築:免税店購入時の連携により、帰国後も継続するデジタル接点を確保した
- 立体的なブランドプレゼンス施策:コスメデコルテによる大谷翔平選手を起用したプロモーションを免税チャネルでも展開、雪肌精「SAVE the BLUE」等のSDGs活動を世界展開した
成果
- 約2万8,000人のID基盤を構築:LINE公式アカウントで、帰国後のリピート購買やキャンペーン情報提供を可能にする顧客基盤を確立した
- 国際的な評価の獲得:環境保全活動「SAVE the BLUE」が、免税業界で最も影響力のある「Moodie Awards」で最優秀賞を受賞した
- 立体的マーケティングモデルの確立:「旅マエ→旅ナカ→旅アト」を一気通貫でつなぐモデルを確立した
グローバル市場を牽引する、戦略的ショールーム化

コーセーグループ全体が2030年に向けて海外売上比率の拡大を掲げるなか、世界中のトラベラーと接点を持つKTRの役割は極めて重要です。
木瀧氏は、免税店やホテルを単なる「販売チャネル」ではなく、ハイプレステージブランドの価値を世界へ発信する「戦略的ショールーム」として再定義しました。この視点の転換により、ブランドと新しい顧客が出会う最前線としての機能を最大化させています。
「お客様」を「トラベラー」と呼び、そのジャーニー全体に寄り添うという姿勢は、KTRの全社員に共有されているといいます。「私自身も旅行が大好きですし、トラベラーとしての視点を日々持ち続けることが何よりも重要です」と木瀧氏は語りました。
5年にわたるKTRとの協業を通じて木瀧氏を見てきたNOVARCAの濱野は、その視座について「木瀧さんは元々コスメデコルテなどハイプレステージブランドのマーケティングを手がけてきた人物。そのバックグラウンドがあるからこそ、トラベルリテールという領域にも『ブランド体験を高める』という視座を一貫して持ち込めている」と語ります。
プロダクトを売るチャネルではなく、ブランド体験を育てる場として捉え直す。この発想こそ、KTRの戦略を支える根幹です。
大谷翔平選手を起点とした、デジタルによる「線」の構築

KTRが推進する核心戦略が、免税店での「購買」とホテルでの「体験」を一つのストーリーで繋ぐ取り組みです。
代表的な事例が、大谷翔平選手を起用した「コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム」のキャンペーン。ホテルや空港ラウンジでのサンプリングで「体験」を創出し、免税店のポップアップイベントでの「購買」へと誘う緻密な導線を設計しました。
さらに重要なのが、購入後の関係構築を支えるLINE公式アカウントの活用です。免税業界共通の課題であった「顧客ID取得難」を、LINEを通じた接点づくりで解決。登壇時点で約2万8,000人のユーザー基盤を確保し、帰国後のリピート購買やキャンペーン情報の提供を可能にしています。
一過的な「点」の接点が、継続する「線」の関係性へと昇華された瞬間です。
多角的な接点によるブランドレピュテーションの構築
木瀧氏は、サウナ施設における「冷やし雪肌精」の展開や、環境保護活動・雪肌精「SAVE the BLUE」の沖縄・中国海南島での実装事例も紹介しました。
これらは単なる話題作りではなく、お客様の日常や価値観に寄り添うことで、ブランドへの信頼を多角的に積み上げる試みです。特にこの取り組みは、免税業界で最も影響力のある「Moodie Awards」で最優秀賞を受賞。「免税事業がここまでするのか」と業界内でも話題になった、地道で本質的な取り組みが国際的な評価を得た象徴的な事例となっています。
「部門横断」のマインドセットによる全体最適の実現
KTRの戦略を支えているのは、部門ごとの短期的なベネフィットを超え、ブランド全体の未来を俯瞰する「部門横断的な意識・視点」です。
木瀧氏は、KTRの売上だけでなく「コーセーグループ全体の売上が上がることの方が重要」だと社内外に伝えています。大規模な組織で起こりがちな部門間のコンフリクトを乗り越え、お客様にとっての価値を最優先する全体最適のマインドセット。これこそが、複雑な旅の動線を一本のストーリーに繋ぎ合わせるための核となっています。
濱野は、「木瀧さんと話していて何より印象的なのは、KTRの売上を上げたいという以上に『ブランド全体の売上が上がることがコーセーグループにとっての成長』という視座を常に持っていること。それなくして、トラベルリテールがブランド全体の価値を循環させる役割は果たせない」と、KTRの戦略の核心を解説しました。
短期的な事業KPIに閉じず、ブランド全体の長期成長を起点に判断する経営姿勢こそ、KTRの取り組みを際立たせている要素です。
「インバウンドとアウトバウンドが社内で分断されている」「旅の体験を一貫した顧客接点として設計したい」。そんなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度NOVARCAにご相談ください。
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