CASE STUDY

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大規模組織を「ワンチーム」で動かす。花王「めぐりズム」が福岡のドンキ1店舗で出荷14.5倍を実現した花王のオールバウンド戦略

小林 恵美様(花王株式会社 ヘルスビューティーケア事業部門 スキンケア事業部 ビオレ事業部長)

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取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
OVERVIEW

中国インバウンドの構成が大きく変化し、日本の化粧品輸出も転換期を迎えるなか、特定の市場に依存しないグローバル戦略の構築が、ブランド企業の成長を左右しています。

本記事では、2026年4月9日に開催されたNOVARCA主催セミナーにて、花王株式会社 スキンケア事業部 ビオレ事業部長の小林恵美氏が語った、昨年まで管掌していた「めぐりズム」や「ピュオーラ」でのオールバウンド戦略の推進事例を紹介します。大規模組織でありながら「Small Start × ワンチーム」の機動力で好事例を生み出す、花王のオールバウンド戦略の実装力に迫ります。

課題

  • グローバル戦略の再定義:国内の成功体験を翻訳して展開するにとどまり、現地生活者に深く刺さる独自の価値提案が不足していた
  • 文化・インサイトの壁:日本視点だけでは捉えきれない地域特有のニーズへの対応が急務となっていた
  • 海外展開の難航:競合の多い市場において、「リラックス・休息」という従来文脈での差別化が困難になっていた

施策

  • 既存ブランドの再定義:「リラックス・休息」から「循環ヘルスケア」へとリブランディングを断行し、現代人の健康課題に応えるソリューションへと進化させた
  • 「Small Start × Speedy」の実践:韓国人観光客 × 福岡 × ドン・キホーテへ徹底的に絞り込み、短期で成功事例を構築した
  • 現地起点のコンテンツ共創:翻訳ではなく、現地KOLと協働で文脈ごとコンテンツを再設計した

成果

  • 1店舗で出荷14.5倍:韓国 × 福岡 × ドン・キホーテ1店舗で、セルイン(出荷)数が日に14.5倍を達成した
  • 再現性ある「型」の獲得:ターゲット国のKOLとの共創モデルが他カテゴリ(炭酸歯磨き)にも展開され、再現性のある勝ち筋を確立した
  • 北米華僑圏での正規流通化:非正規ルートの乱立から脱却し、価格秩序とブランド価値の両立を実現した

既存の訴求を脱却し、ブランドを「循環」へ再定義

「めぐりズム」のグローバル展開において、花王は差別化の再定義という大きな挑戦に取り組みました。

国内で強みとしていた「休息・リラックス」という文脈は、競合の多い海外市場では独自性を発揮しにくいという課題があったためです。そこでブランドの技術的なオリジンに立ち返り、温熱や蒸気で血流を促進させる「循環ヘルスケア」という新たな文脈へとリブランディングを断行しました。

これは単なる言葉の置き換えではなく、現代人の健康課題に正面から応えるソリューションへの進化を意味しています。

「Small Start × ワンチーム」── 韓国 × 福岡 × ドンキでの実装力


戦略の核心として小林氏が掲げたのが、「Small StartでSpeedyに、好事例を一気につくりあげる」という徹底した実践主義です。

同社は、韓国人観光客の熱量が高い「福岡のドン・キホーテ」を主戦場に選定。韓国からの玄関口である福岡の地理的優位性と、免税比率の高さという明確なデータに基づく意思決定でした。

実装にあたっては、本社の事業部、現地法人の花王韓国、九州リージョンの販売部門、グローバルチェーンストアを管轄するチームが、部門の垣根を越えてワンチームを編成。通常は独立して動きがちな複数部門が「福岡での成功」という共通目的のために連携したことで、施策の精度を極限まで高めています。

「まずはスモールスタートで確かな勝ち筋を証明し、その再現性を確認する。このプロセスこそが、戦略を確実に機能させる要です」と小林氏は振り返りました。

長年にわたって花王のオールバウンド戦略を伴走してきたNOVARCAの濱野は、「大規模な組織でありながら、本社・現地法人・販売部門までを横断して一つのチームを組める巻き込み力こそ、花王の本質的な強み」とコメントしています。花王社内では、経営会議の場でも「オールバウンド戦略」というワードが共通言語として浸透しつつあり、組織全体での実装が加速しているといいます。

現地インサイトから生まれた「出荷14.5倍」

施策を最終的な成果へと導いたのは、徹底した現地視点の取り込みでした。

「めぐりズム炭酸脚シート」では、在日韓国KOLとの座談会から意外な事実が見えてきました。メーカー側が当初想定していなかった、現地インサイトから生み出した価値訴求こそが、現地生活者を最も惹きつけるというのです。

こうしたインサイトは即座にデジタルコンテンツへ反映され、福岡のドン・キホーテ1店舗での展開で、セルイン(出荷)数は日に14.5倍に跳ね上がりました。同社が長年踏襲してきた「日本で作った商品をハングルに翻訳して並べる」というアプローチからの脱却を意味する、転換点となりました。

さらに小林氏は「国内で実績を作ることが、海外法人での交渉力を高めることに繋がる」とも振り返ります。日本のリテールで売れているという事実が現地ディストリビューターへの強力な交渉カードとなり、インバウンド施策がアウトバウンドの推進力へと循環していく構造が生まれています。

華僑圏という新たなフロンティア ── 北米市場での正規流通化


オールバウンド戦略のもう一つの軸が、世界に約5,500万人とされる華僑圏への展開です。日常的に「巡らせて整える」健康観を持つ華僑層は、めぐりズムのブランド哲学と親和性が高いと考えられています。

そこで花王が着手したのが、北米市場における華僑圏向けプラットフォームでの正規流通化です。それまでは非正規ルートで商品が乱立し、価格も乱れ、本来のブランド価値が伝わらない状況が続いていました。NOVARCAと共に、商流・物流の整理から、現地で「使いたくなる」翻訳での情報発信までを一気通貫で設計し、価格秩序とブランド価値の両立を実現しました。

「ブランドを愛してくれる人に、正しい価値を届ける」というオールバウンド戦略の本質を体現する取り組みです。濱野は「正規流通化は、クロスボーダー流通が当たり前になっている今、自社チャネルでブランド価値をどう守るかという業界共通の課題。そこに花王のような大手が本気で取り組むこと自体が、業界全体への大きなメッセージになる」と評価しました。

「グローバル市場で何から手をつけるべきか分からない」「インバウンドとアウトバウンドが分断されている」。そんなお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度NOVARCAにご相談ください。

小林 恵美様
花王株式会社 ヘルスビューティーケア事業部門 スキンケア事業部 ビオレ事業部長
花王へ新卒入社後、販売部門でのチェーン担当を経て、スキンケア・ヘアケア・化粧品・パーソナルヘルス領域において、ビオレ、キュレル、KATE、ソフィーナiP、めぐリズム等、複数の主力ブランドでブランドマネージャーおよび事業責任者を歴任。​世界中の生活者それぞれの「脊髄にひびく」尖りある価値創造マーケティング・ブランド事業成長戦略に取り組む。​近年は、日本ブランドのグローバル需要獲得のための新たな実践に力を入れている。​
取材・文:NOVARCA 撮影:NOVARCA
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